バレエへの執着
尼崎にたどり着いたあと、
るおうはYAGPに出場するつもりだった。
潤平と白黒つけなければならない。
るおうは自分のバレエに
絶対の自信を持っている。
こんなに踊れる人間は自分だけだ。
いま自負心を揺るがすものは潤平だけである。
下手くそだが、感情豊かな演技。
もしかしたらバレエの真実は、
潤平のほうが近いかもしれない。
当日のエントリーは受付で断られた。
すでに審査は始まっていて、
ちょうど潤平が踊っている!
客席で、るおうは見た。
潤平がどの程度の踊りをするのかは分かった。
次は自分の踊りを見せる。
執念である。
対決し、決着をつけてやる。
るおうは感情が激しい。
心の中に渦巻いている。
そのまま舞台袖へ侵入。
踊りたいんだけどっ・・・
どうしたらいいんだっ・・・!!!
運良くスタッフにるおうの話がとおり、
休憩時間中に踊れることになった。
ウォーミングアップを始めると、
るおうは変わる。
思考はバレエに集中する。
いまから自分は最高の踊りを見せる。
そして自分と潤平の違いを
はっきり認めさせる。
僕は王者だ。
本物だ。
ダンスール・ノーブルになるのは僕だ。
そして圧倒的な説得力をみせた。
ロシア行きの誘い
決着をつけて、るおうはロシアへ戻る。
潤平のあとに残る懸念は、都だ。
いっしょにロシアに行こうと、
るおうは都に提案する。
「ロシアでなら、僕が、きみを守れる」
ロシアはバレエを尊重する
素晴らしい国だから。
るおうはやっと自分の環境を得た。
日本は、るおうの価値を
理解できなかった。
学校ではいじめられた。
仲間うちでマウンティングしあい、
弱いものの足をひっぱる社会。
るおうは都に守られていた。
日本は、るおうに値しなかった。
都の自立
るおうからの提案に都は泣いてしまう。
こどもに戻って、るおうにしがみつく。
都の泣き顔にまとわりつくように
イバラが描かれる。
魔法がとけて解放されたのだ。
るおうは野獣から王子に戻った。
今は、はっきりとわかる。
都のほうが、ずっと
るおうに守られていたのだ。
だから都は答える。
わたしもバレエと向き合いたい。
るおうに自分のありたい姿を乗っけるのをやめて、
自分の場所で、独りで。
一緒に行けなくて、ごめんね・・・
おとぎ話の終わり。
ふたりはキスでをする。