るおう、久々の登場
潤平はYAGP出場を認められ喜んでいる。
通常の奨学金+コンクール費用を約束され
安心してるおうと対決できる。
ありがたい。
るおうのほうは、既に特訓に入っている。
ロシア人教師を呼んで特別に個人レッスン。
さらに素晴らしく上達している。
トップを獲ってしまうかもしれないよ
と、ボリス先生も興奮している。
圧倒的な実力で、当然のごとく
優勝するを期待されている。
潤平の見込み
潤平は、見込み無しだ。
「あなたではお話になりません」
綾子にはっきりと言い渡された。
参加するのはシニア部門。
プロでも通用するレベルだ。
バレエを始めて一年半で
参加することはまずない。
綾子は「生川バレエ通信」で
潤平の参戦を広めるつもりだ。
奇跡の上達、としておいて
潤平のレベルの低さをごまかす。
潤平はもう何だっていい。
援助付きでコンクールに出られるのだ。
「先生とトップ狙います」
と前向きである。
夏姫の決意
夏姫は納得がいかない。
潤平が生川に取り込まれてしまった。
目先の金で、あっさりと。
「わたし達もう組むこともないかもね」
夏姫は留学できたら
そのまま海外へ行ってしまうつもりだ。
「生川のプリンシパル程度が
おいそれとパドドゥ組めない次元の
ダンサーになりたいもの」
実力で、正々堂々と
生川から出て行く。
コンクールはその課程だ。
るおうと真鶴のシンクロ
綾子はそんなこと百も承知。
夏姫のもくろみなど分かったうえで
出場を許可した。
夏姫には優勝の見込みがあるだろう。
しかし何が起こるかは分からない。
綾子は、真鶴のことを思い出していた。
るおうの母親だ。
真鶴は天才だった。
優勝候補の千鶴から
あっさりトップを奪った。
千鶴もまた、真鶴を思い出している。
るおうのレッスンをしながら
るおうに真鶴の姿をかさねている。
「あなたは事件を起こすのよ」
「天才の登場の瞬間はいつでも
えぐいほど鮮烈なものよ!」
「美しさは力!」
生川のような資金力も
充実した環境もない。
だけどるおうの美しさは
そんなものを超えられる。
そう千鶴は確信している。
るおうの母親がむかし
千鶴を打ち負かしたように。