社交ダンスの理想と現実
男女の距離
「初めてあったような男の人が
平気で女の人にこんなことするなんて
いやらしい!」
(名香智子『パートナー1』小学館文庫62ページ)
フランツのダンスを忘れられない茉莉花(まりか)は
ついにダンス教室をおとずれる。
教室を紹介してくれたのはイケメンの早大生、神砌(じんみぎり)。
神と茉莉花は書店でたまたま再会した。運命だ!
教室に迎えられた茉莉花はおずおずと踊りはじめる。
そして、さっそく大きな障害にぶちあたった。
茉莉花はがまんできず、神に平手打ちし
教室を逃げ出してしまう。
その障害とは・・・
それは、さわるということ。
茉莉花は17歳。
目の前によく知らない男の人が現れ、
右手を握られ、背中にさわられて、
正面から体を寄せられた。
近い。
これが社交ダンスの正式なホールドだけど
茉莉花にはがまんできなかった。
そうだよ。
女には、迎撃システムが備わっている。
近づいてくる男を判別し、
キモいやつを打ち落とさないといけない。
神は迎撃システムを発動させて撃墜されてしまった。
誰でも思い当たる、距離感の問題
家に帰った茉莉花は、ふしぎに思う。
フランツと踊ったときは、こんなことはなかった。
迎撃システムは作動せず、ふたりはくっついて
しあわせに踊れたのだ。
これは、反射的なきもちでやったことで、
本人にも理由が分からない。
欧米人ならO.K.で、日本人だからだめ?
じゃあ、神は茉莉花とおどれないのか。
誰もが思い当たるこの障害を
神はどう乗り越えるのか。
実際に社交ダンスをやろうとすると
乗り越えなければいけない壁が多い。