音楽への感性がダンスをつくる。
「星が爆ぜる。これは音の命なのか?」
(ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』第98幕)
潤平(じゅんぺい)は、素晴らしい踊りをした。
よかった。
前回(97話)が、踊りはじめる前に
終わってしまったので、まちどおしかった。
今回の潤平の踊りはどんなだったのか?
それは、楽しい踊り。
おもわず笑いがこみ上げて止まらない。
身振りのひとつひとつが、音楽からうまれる。
最後には、音楽とダンサーと観客が一体になる踊りだった。
綾子先生のいう「片鱗を見せる」ことができた。
過酷な練習の後にもかかわらず、
事故なく済んでよかった。
ダンサーならではの音楽への感覚がある。
耳で聴くだけでなく、
体で感じる音楽がある。
音楽の表現全体とか、
リズムの感じ方、メロディーの感じ方とか。
全身で音楽を感知することもある。
そもそも潤平が都(みやこ)に
惹かれたきっかけは、ピアノの音だった。
都はなんだか気になるピアノを弾く。
潤平はそれを「予感の音」と感じていた。
バレエとピアノの相乗効果
大雑把に言えば、リズム感覚そして呼吸だろう。
具体的に分解していけば
ダンスは演奏に役立ちそうだ。
足先で床を押す感覚で、
鍵盤の和音をつかむとか。
手の指を遠くへ伸ばす感覚で、
打鍵後の脱力をするとか。
指先まで神経を行き届かせることで、
音の粒を磨くとか。
なめらかな動きで、
レガートで朗々と歌う音を出すとか。
都のピアノは何か違っていたのだ。
ダンサーだからこそ出せる音だった。
潤平はそれが分かったし、
そういう感性があったからこそ踊れた。
すばらしいダンスだった。