バレエのタイツは恥ずかしい。
区民ホールで行われる洋舞祭りの本番が始まった。
幼なじみの兵ちゃんが見に来ている。
同級生の黒島に引っぱられて会場に入る。
黒島はノリがいい。
(前に潤平にパンツを見せてくれた)
わざわざサッカー部の合宿を抜けて見に来たのだ。
兵ちゃんは潤平が好きなのだ。
「バンドやろうぜ」という誘いを裏切って
バレエに行ってしまったことは許せないが、
潤平が何をしているか気になって仕方がない。
舞台上の潤平を見て、兵ちゃんは吹き出す。
タイツ姿がかっこ悪い。
まるで罰ゲームだ。
舞台をかりた初恋
潤平は全く気にしていない。
演技に陶酔している。
都がお姫様になって舞台で待っているのだ。
自分は王子様なのだ。
リアルに好きな女の子と手を取り合って踊れる。
みんなが見ている前で、ライトを浴びながら。
見ている保護者たちが盛り上がる。
潤平の昂ぶった気持ちが観客に伝わる。
ただ、技術的にはまずい。
基本的なことができていなくてバレエにならない。
下手だけどなんかワクワクする。
そんな踊りだ。
対する、るおうは「格が違う」
完璧なテクニックで観客を圧倒する。
悪魔なのに格好いい。
けた違いの存在感である。
ふだんは押さえ込んでいる感情が
完全にコントロールされた状態で流れ出す。
ステージ上では別人。
感情移入しすぎたあげくの暴走?
潤平の興奮は止まらない。
千鶴の指示そっちのけで舞台に飛び出していく。
「はやく!!はやく行きたい・・・そっちに行きたい
そこ俺の居場所っ・・・」
音楽に引っぱられてステージに上がる。
そこではお姫様が悪魔に捕まっているのだ。
お姫様は都だ。
今までの都のいろんな表情がフラッシュバックする。
現実と役柄が混ざり合って区別がなくなる。
悪魔に振り回されて潤平は倒れる。
都が遠ざかる。
ここで死ぬわけにはいかない。
潤平は振り付けを無視して立ち上がる。
都を失いたくないから、
このまま死にたくないから。
ありえない。
この後どうするんだ。
バレエの人は即興で踊れなかろうに?
それとも踊るのか?
ありえないけど楽しみだ。