折り目正しい踊り？
るおうの優勝に興奮したまま
潤平はいよいよ初審査。
踊りはすっかり変わっている。
正確。
全ての動きが中村先生からの指示どおり。
見に来た千鶴が驚く。
「･･･すごいわね！潤平がまともに踊るなんて！」
バレエを始めて１年半とは思えないほどの完成度だ。
課題はやりきった。
潤平は急激な成長を見せた。
クラッシックバレエのコンクールだから正確に美しく踊る。
基礎を身につけていない自分が
課題をどこまで誠実にこなせるかみせる。
いまは派手さより正確さ優先だ。
だが潤平は不足を感じている。
「あの光は見えなかったな」
最高のパフォーマンスではなかった。
潤平の中にある理想とはちがう。
点数より客受け
舞台袖に戻った潤平に冷や水を浴びせるやつがあらわれる。
寛太だ。
「審査員受けねろたんか！」
「そんなマジメーな『バジル』、『バジル』ちゃうわ！」
「踊りに深みが無うてつまらへんなぁ」
潤平の気がかりをもろにつついてきた。
そして寛太は素晴らしい踊りをみせる。
ジャンプが高い。
回転も２３回？
回りすぎ。
超絶テクニックである。
小柄なのに舞台では大きく見える。
踊りきると会場がどよめく。
小さな傷や崩れはあるものの
サービス満点の演技をみせて
観客を喜ばせた。
潤平は疑問を抱く。
俺はこういう踊りをしたいんじゃないか？
寛太の方が魅力的だ。
いったいどっちを目指して踊ればよかったのか？
唐突に、るおう登場
審査が終わり出ようとすると客席が暗くなり、幕が開く。
るおうだ。
百合の花がおちる。
真っ暗な森の中で精霊に囲まれて、るおうが踊りはじめる。