響のダンス
響(ひびき)は貧相だ。
頬骨が目立ち、すきっ歯。肌も汚い。
とてもオーロラ姫には見えない。
なぜ新しい候補に連れてこられたのか謎である。
しかし踊りはじめると雰囲気が一変する。
立っただけで情景が見える。
それは王宮での結婚式の光景だ。
少女ではなく美しく豊かな女性。
スタッフ全員が拍手してしまう。
そして踊り終わると元に戻る。
貧乏ったらしい。
落差がひどい。
「す、すごいな・・・
踊ってる時ちゃんと姫に見えんのにな」
インパクト大である。
またもや綾子の作戦か?
オーディションは12月。
あと1ヶ月ない。
響きをみた夏姫が、参戦を表明する。
勉強のため、と言う名目での参加だ。
勝つ見込みはうすい。
さっそくペア決めである。
時間がない。
潤平と響だとあまりに貧乏ったらしいので
潤平と夏姫、海咲と響という組み合わせに決定。
綾子からの課題は、
よくよく話し合い、お互いを尊重し、理解し合うこと。
難題である。
パ・ド・ドゥ練習開始
ロシア帰りの王子役は、順調に仕上げてきている。
手応え十分。
潤平たちとは対照的である。
新人のパ・ド・ドゥは危なっかしい。
テレビ的にはおいしい画がとれる。
海咲と響はうまくいかない。
アクロバティックな動きをするのに
相手に身体を委ねるのに恐怖心が残っている。
もともと貧相な響の顔がいっそう曇る。
潤平と夏姫も難航している。
ふたりとも我が強い。
自分のやりたいイメージを言葉で主張し
もはやケンカである。
怒鳴り合いが逆にすがすがしい。
だが進まない。
指導役の紅乃(くれの)があきれている。
潤平・夏姫ペアに足りないものはふたつ。
助け合おうとする姿勢と、色気。
そこで紅乃から提案である。
「潤平、あたしとデートしよう」
いや、デートするとダンスの勉強になるのか?
エスコートを心がけろとか、そういうこと?