ふたまた打診
生川綾子から奨学金を提示されたあと
潤平は五代バレエスタジオに向かう。
千鶴へ報告である。
真夏のくそ暑いなかセミが鳴き続けている。
「俺、綾子さんに認められた」
「これでちびっ子たち戻ってくるよ!」
すぐに事情を察した千鶴に
潤平は提案する。
「両方!!!通おうと思って!!!」
こっそりふたまたをかけるつもりだ。
なかなかなチャレンジャーである。
千鶴の拒絶
千鶴じしんが生川バレエ団を裏切ったことがある。
生川で目をかけられていたにもかかわらず
何の断りもなくロシアに留学してしまった。
そしてロシアのバレエ団に入団した。
「しょうがないじゃない、
どうしても行きたかったんだもん」
型破りである。
だからこそ、ふたまたの申し出を拒絶する。
生川に義理を返していないことは、
千鶴の心に今でも残るしこりだ。
はじめから裏切るつもりで
生川から奨学金を受け取るわけにはいかない。
再度ふたまたの申し出
潤平は食い下がる。
千鶴からバレエを教わりたいからだ。
千鶴は潤平を最大限に評価してくれる。
洋舞祭りのステージがいい例だ。
千鶴は潤平がもともと持っているものを
最大限に伸ばそうとする。
逆に生川では徹底的に矯正される。
正しいバレエを精神の根本から仕込もうとする。
両方、吸収したいというのが潤平の希望だが
千鶴は認めない。
100%千鶴を信じてやっていくのでなければ
五代バレエスタジオに来るな、と扉を閉じる。
ロッカールームで足の引っ張り合い
サマースクール7日目である。
潤平は鏡前のポジションを獲得する。
るおうを追いおとしてトップ3に入った。
ロッカールームで海咲からの攻撃をうける。
・千鶴は潤平の生川入りを望んでいない。
・後から入ってきてポジションとりやがって。
・しかもるおうから都をとりやがって、むかつくわ。
今回の攻撃は強引である。
潤平があまりにはやく成長したのだ。
しかも明日が最終日。
もし潤平が欠席すれば、海咲が奨学金獲得である。
「俺だってもっと上手くなりてぇんだよ」
思わず潤平は叫ぶ。
いいセリフだ。