社交ダンス効果
たたらは教室で踊っている。
授業を聞きながら、座ったまま
足が動いてしまう。
天平杯の高揚が忘れられない。
机の下でステップを踏んでしまう。
移動中もただ歩いているだけじゃなく
美しくウォーキングしてしまう。
肩を下げてアゴをひく。
目線は遠く前を見る。
猫背がなおってしまった。
不良たちにからまれても
平然と受け答えしている。
社交ダンスの世界を説明したい欲求が
いろんなものを吹き飛ばしてしまった。
しずくとの関係
職員室でしずくを見かけた。
たたらは担任に呼び出されたのだ。
進路についてまったく
未定だったため呼び出された。
卒業後のことを自分で考える時期だ。
たたらはしずくを見ている。
しずくの進路が気になる。
本当にダンス留学するのか?
いま気になるのはダンスのほうだ。
しずくのほうから声をかけてくれて
一緒にダンススタジオへ向かうことになった。
しずくはごく自然にしている。
競技ダンス中心の生活で
すっきりと揺るがない芯がある。
ダンスのことでは迷いも悩みもあるが
それ以外のことは力の抜けた自然体だ。
たたらは天平杯を戦い抜いて
貴重な仲間をゲットした。
しずくだけでなく、清春も
ガジュも、まこも、仙石だってダンス仲間だ。
録画で自分のダンスを見る
スタジオはレッスン中で使えない。
たたらとしずくは天平杯のDVDを見ることにする。
自分のを録画で見るのは恥ずかしい。
ダンスならなおさら恥ずかしくなる。
「だって現実見るとヘコむんですもん」
仁保の言うとおりだ。
「思った以上に自分が下手すぎて」
たたらも録画で自分を見て愕然とする。
崩れてる。
気持ち悪い。
「これは、まこちゃんの足手まとい以外の
何物でもないレベル・・・・・・っっ」
赤面してまともに画面を見られない。
下手すぎる。
自分の姿を録画で見る効果はこれだ。
自分の力不足を嫌と言うほど思い知る。
「何より大切なのは『下手だ』『下手くそだ』
『自分の踊りは話にならない』と肝に銘じることだ」
「謙虚な客観性をもってダンスに仕えろ」
たたらはDVDを持ち帰って自宅で見直す。
畳の上で形を確認して自分を見直す。
今ある自分の現実を認めよう。
そこから積み重ねて目標へ到達しよう。
ダンス練習の後に、受験勉強をはじめる。
目の前の問題集を解く。
具体的な行動の先に成長がある。
しずく達に追いつくのだ。
清春としずくは留学を延期し
三笠宮優勝を目指している。
1年以内にランキングをのぼって
しずく達と試合で勝負するのだ。