夢の中でも体重を消失
たたらは仙石に再会した。
久しぶりにアドバイスをもらえる。
千夏と組んで踊り出すが、
水のようにズブズブと
千夏が消えてしまった。
千夏だけでない。
たたらの足も水になって落ちていく。
「助けて仙石さん」
パニックを起こし、
フロアに足を叩きつけたところで目が覚めた。
夢オチだ。
たたらは睡眠中も考え続けている。
シャワーを浴びながら「体重の消失」を思い起こす。
静岡グランプリで得た感覚を自分なりに整理したい。
シャワーをあびるたたらの体つきが変化している。
別人のように引き締まり、筋肉質だ。
かっこいい体。
成長期の訓練が、驚異的な効果をおよぼしている。
マリサ先生からの命令
たたらと千夏はマリサ先生へ謝りに行く。
おみやげ付きである。
静岡といえば八ッ目うなぎパイ。
「夜のお菓子」を差し出しながら
「どうしても出たくて
行って来てしまいましたっ」
二人でおじぎをする。
マリサ先生はすべて知っていた。
「大人をなめんじゃないわよ」
底辺で予選を通っても
何の意味もない。
マリサ先生からの命令は明確だ。
「あなた達には次の試合で優勝してもらいます」
競技ダンスでの勝者は優勝カップルのみ。
1位以外には価値がない。
極限状態の相当なプレッシャーの中で
実力を出し切り、勝利をつかみ取る。
審査員たちに見せつけ、自分を選ばせる。
競技者としての強い精神力が必要だ。
ダンス合宿で軽井沢へ
優勝に向けて、たたらたちは
集中レッスンを受けることになった。
軽井沢での強化合宿である。
釘宮の運転する車でたたらは軽井沢へ向かう。
すでに行きの車中で、
たたらは精神力を試される。
釘宮と1対1で過ごすことになるのだ。
運転席が釘宮。
助手席がたたら。
女子たちは後部座席で眠っている。
たたらは釘宮がおそろしい。
和やかな雰囲気を作るべく
話しかけてみるがうまくいかん。
釘宮はストレートな物言いをする男だ。
よくいえば正直・率直。
しかしたたらは疲弊していく。
しずく達との再会
別荘に着いたら、たたらは草むしりだ。
グランプリ無断出場の罪をあがなうべく
猛暑のなか一心に作業する。
たたらは草をむしりながら
ダンスのことを考えている。
まだ優勝できる自信がない。
先日の異常体験をどう整理していいか
いまだに分からない。
作業の果てに目を上げると清春がいた。
しずくもいた。
(パワーアップしている)
(高1とは思えないセクシーさ+メガネ)
ガジュもいた。
勢ぞろいの合宿である。
にぎやかな夕食になった。
そして懸案の「体重消失」が解決する。
清春とガジュが教えてくれた。
シンプルな答え。
「よくあるべな?それ系の感覚」
ダンサーにとって思い当たるふしのある
共通の認識らしい。
清春はそれを「カウンターバランス」「平衡」と呼ぶ。
ガジュは「ヨーヨーっぽい」。
しずくは「ブランコ」。
たたらも同じ感覚をあじわったのだ。
「あれは心地が良かったんだ」
「体が受け入れたものを
頭でも信じるしかないんだな」
ダンサー同士だからこそわかり合える言葉がある。