ようやくレッスン開始
はやくも5話目にはいった。
梨鈴まだ練習していない。
ややこしいやり取りが続きすぎた。
バレエは、はじめるまでの準備がたいへんだ。
ようやくシューズをはいて練習を開始。
新しいバレエシューズを履いて
鏡にうつる自分の姿を確認する。
意外にスタイルが良い。
顔もいい。
楽しい瞬間だ。
これからはじまるできごとに期待がふくらむ。
部室はバレエの練習に十分な設備を整えている。
こんなに良い部屋だったとは気づかなかった。
バーがあるし、大きな鏡も壁一面にはってある。
天井高も充分。
ライバルの乱入
レッスンを始めたとたん、
練習室のドアがあらあらしく開かれた。
ライバルの乱入。
髪の毛を編み込んだ気の強そうな女子である。
宝生は彼女を終始「おまつりくん」と呼ぶ。
正確な名前を覚えていない。
つづいてもうひとり男子が乱入。
ふたりは双子の兄弟。
大林真都理(まつり)と伊織(いおり)。
桔平からは「大林組」と呼ばれている。
もともと宝生と同じバレエのクラス。
コンクール入賞の常連だ。
そして宝生をかってにライバル視している。
バレヱ部創設の話を聞き、
わざわざ勝負を挑みにきたのだ。
練習試合のお題は「白鳥の湖」
まつりは一方的に練習試合の条件を提示する。
「白鳥の湖」の一場面をおたがい披露し
まつりを感動させたら宝生たちの勝ち。
もし宝生たちが負けたら
まつりの相手役ジークフリートとして
宝生が舞台で踊らなければならない。
「ぜんぶ自分ルールじゃんか」
桔平がつっこむ。
勝ち負けの基準がよくわからない。
単にまつりが宝生と踊りたいだけだ。
「僕は競うためには踊らない」
宝生はとうぜん断る。
競争がいやでバレエスクールをやめたくらいなのだ。
ローザンヌコンクールだって断った。
そして一ヶ月後の本番へ
しかし宝生は、まつりの提案を受けることになる。
競い合う「勝負」ではなく
バレエを通して人と心を分かち合うため
命をかけて踊る。
このへんの理屈はまったく理解できない。
ともあれ本番は一ヶ月後に決まった。
会場の手配も宝生たちがすることになった。
面倒なことを引き受けてしまった。
そもそも梨鈴は初心者だ。
現時点ではシューズをはいてみただけ。
一ヶ月で舞台にのることなどできるのか?
「さあ、本番にむけて練習だ」
軽やかに回転しながら宝生が宣言する。
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