まつりたちの舞台が終わった。
次は宝生たちの出番だ。
反撃開始である。
お・ま・た・せ・ジークたん♪
宝生と桔平は驚愕の演技力をみせる。
身ぶりだけでなぜかセリフが聴こえてしまう。
しかも内容がコント。
ひどすぎる。
まさかジークフリート王子に
「ジークたん」と呼びかけるとは・・・
完全に意表を突かれた。
ただし桔平のオディールは美しい。
女装が似合っている。
息の合った漫才パドドゥ。
「この低身長はまぎれもなくオデット姫!」
宝生の挑発に、桔平が怒りを燃え上がらせる。
バレエで鉄棒?
高ぶったオディールをジークフリートが投げ上げる。
「イケ、桔平」
「おうさ」
舞台に降りてきたバトンを鉄棒にして
桔平は大回転をはじめた。
舞台係のジイさんも巻き込んで
非常識な演出である。
こんなことぜったいしてはいかん。
危険すぎる。
これではバレエではなく新体操。
いやサーカスだ。
桔平はひねり回転をくわえて着地する。
宝生の腕の中にフィッシュダイブ。
観客の度肝をぬいた。
「反則よ」
まつりが思わず言う。
まったくその通り、反則技の連続。
そんなことはお構いなく
桔平は最大の見せ場にはいる。
32回転のグランフェッテ。
ではない。
倍速で回って64回転するのだ。
高速で回転するオディールの周りを
ジークフリートが飛び回る。
「なんて素敵な人なんだ」
「君に決めた!!」
おもわず愛を告白する王子。
マンガとはいえむちゃくちゃな展開。
煙幕の中から悪魔登場
オディールはにやりと笑ってマントをまとった。
ピアノのカバー布を体に巻き付けたのだ。
さらにブラパッドの中から爆薬を取り出し
地面にたたきつけた。
もうもうと煙に巻き込まれるステージ。
「お前はロットバルト!」
ジークフリートが嵐を巻きおこし煙を吹き飛ばす。
胸に仕込んだリモコンのスイッチを入れたのだ。
舞台わきの家庭用扇風機が起動する。
悪魔に変身したオディールが中からあらわれた。
ブラパッドを抜いたせいで
シルエットが変わっている。
髪型も2本の角が立っている。
「オデットはどこに?」
姿を探す宝生に、桔平ロットバルトが不敵に宣告する。
「オデットならここにいるさ」
「お前のすぐそばにな」
手づかみで背後の幕を引きおろした。
オデットの登場だ。
こんな方法があったとは・・・
予想外のことが多すぎて
オデットの登場の仕方など
突っ込んでいる余裕もない。