ダンスで気候すらコントロールする
雨が降り始めた。
翔之介が高笑いする。
「上に届いたんだ。学校じゃ足りなかったがここでならいけた」
うれしい。
ソラと踊れた。
天気すらコントロールできている気がしている。
ソラは翔之助にたいして厳しい。
翔之介の腹をつねってたしなめた。
「訳わからないことをあんまり言わないで」
「私がいままで甘かった」
翔之介は才能にあふれているけど世の中につながれない。
ダンスできても見てもらえなければ意味ないのだ。
ソラの役割は翔之介とムラサキを一般社会へつなぐことだ。
彼らのエネルギーを注ぎ込んで世界を変える。
雨が降りしきるなか、3人は山を駆け降りる。
ムラサキと翔之介はうれしい。
ずっとほしかったソラが仲間に入ってくれた。
ソラもうれしい。
だが同時に強烈な使命感をもっている。
翔之介やムラサキのようなダンスの才能はない。
それでも自分にしかできない役割がある。
夜と雨の連続シーン
山頂から見下ろす夜景。
下界が美しく光っている。
星の光と町の灯り。
ふたつのあいだに翔之介たちがいて、雨にふられている。
翔之介たちは走りはじめる。
夜の山道。
翔之介ははだし。
ムラサキはランニングシューズ。
ソラはローファー。
山道を霧が登ってゆく。
草木が雨に濡れる。
翔之介の異常性
翔之介はひたすらにうれしい。
「うふふふふ」
「あはははは」
にこにこ笑いながら走る。
雨も風も気にならない。
真剣な面持ちの女子たちとは対照的だ。
3人がほぼ横並びで走っている状態をただただ喜んでいる。
しかし翔之介はたんなる阿呆ではない。
ソラがつまづいて転倒すると、自分の体をクッションにしてソラを守る。
とっさの反応が早い。
「ソラ・・・大丈夫か?」
岩の上で鼻血を流し心配する翔之介にソラがおもわず叫んだ。
「おまえがなッ!」
翔之介はなにも考えない。
アマノウズメと天照大神
翔之介のふるまいは「アマノウズメ」とイメージが重なる。
「古事記」に登場する日本最古の踊り子。
太陽の神、天照大神が身を隠し、世界が闇に包まれたとき、
アマノウズメは裸踊りで太陽の神を外に引き出した。
アマノウズメがやったのは裸踊り。
身体をひらいて「公然わいせつ級の」ふるまいをした。
どうしようもないバカ。
だけど状況を変える力を持っているのはバカだ。
翔之介のバカさは、翔之介の才能とひとつのもの。
考えるより先に体が動く。
アホみたいに笑いながら物事を動かしてしまう。
神の思いさえ超えて悩みを吹き飛ばす。
ソラは気づく。
「才能」って神すら予測できないほどに
バカってことなのかもしれない
まったく思いもしない方向から問題を解決する。
ダンスとか、芸術とかのすごさはこういうところ。
まじめな思考を飛び越えて、軽々と笑いながら外の世界を見せる。
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