イケメンパパのお迎え
ムラサキたちは外界におりてきた。
3人とも雨に濡れてびしょびしょだ。
ムラサキが駐車場に向けて手をふる
登山口までムラサキのパパが迎えに来てくれている。
パパは美形だ。
長髪でモノトーンの着こなし。
ビジュアル系ミュージシャンみたい。
乗っている車はもちろんスポーツカーだ。
ムラサキのパパは3人をみてあぜんとする。
「ツッコみ所が多すぎてなにから言えばいいのか・・・」
「君たち」
「バカなのかい?」
3人ともびしょ濡れのうえボロボロだ。
わけがわからない。
それでもムラサキのパパはテンションが高い。
「UREEYYY(ウリイイイイイ)」
奇声をあげながらスポーツカーをぶっ飛ばしてみんなを送ってくれた。
「ははは君たちのバカがうつったのかもな!」
娘の友達に会えるのはうれしい。
しかも3人とも遠慮なく付き合っているようだ。
人里の朝
朝になった。
うってかわってキレイに晴れた。
ムラサキはソラといっしょに登校する。
ごきげんだ。
ムラサキは自由になった。
あるきながらお菓子を食う。
「秋はやっぱり食欲の秋よね~」
ダイエットからも解放されている。
「じゃがロングの栗スカッシュ味最高!」
ソラとも友だちになったし。
気を遣わずに話すことができる。
おなじ部活(ダンス部)だし。
学校に来るとムラサキはマリンを発見する。
マリンは生徒会長として校舎の前に立っている。
風紀委員たちとともに朝の挨拶をしているのだ。
威圧するかのごとく生徒たちにあいさつする。
秩序をつかさどるものの地位にマリンはいるのだ。
「下の世界」の支配者である。
生徒会のメンバーと風紀委員を従えて昇降口に君臨している。
登校する者たちはマリンの前を通らねばならぬ。
やたらガタイのいい風紀委員に威圧され、女生徒があいさつを返す。
マリンはムラサキにもあいさつしてきた。
「ごきげんよう一条さん」
瞳が黒い。
真っ黒だ。
マリンの背景も大きな穴のように塗りつぶされている。
こわいわ。
こちらを検閲でもしているかのようだ。
ソラは宣言していた
「今までみたいに向こう側で好き勝手やってるだけじゃ済まませない」
「ちゃんと人の里に降りてもらう」
人の里の代表者がマリンだ。
がんじがらめになってつらそうだ。
ムラサキはこの面倒な世界にはいって行くことになる。
ひとまずムラサキはにっこりわらってあいさつする。
「ごきげんようマリンちゃん」
ムラサキのコマの下に闇夜に浮かぶ人里の灯りが流れる。