サシュコーはブランコを完全コピー
YAGPのクラシック審査。
サシュコーは会場をわかせる。
超絶技巧の連続で攻め立てる。
寿が感動しながらていねいに解説。
潤平もサシュコーの舞台に圧倒される。
ただしほかの観客とは感動の質がちがう。
サシュコーはブランコを完全コピーしているのだ。
潤平は岩井先生の家で動画を見て知っている。
レアで一般に出回っていない資料なのだろう。
サシュコーがやっていることは、かつてのブランコのコピーだ。
ブランコの見せたものが、サシュコーに再現され観客をわかせる。
気づいている人はごくわずか。
潤平の他には、ブランコ本人とオルガ先生くらいか。
客席で見ているブランコはいい顔をしない。
不快。
ポーズを決めるサシュコーを背にして会場を出てしまった。
ブランコとオルガ先生
オルガ先生はブランコと一緒にロビーに出る。
「当時の俺の劣化物真似見せられたって、気分が悪いだけだ」
ブランコの本心が出た。
もう自分は踊れない。
もし足を失ってなければ、さらにすごいことができていたはずだった。
今のサシュコーなど及びもつかないくらいの。
オルガ先生は冷静に現状をまとめる。
「その脚ではもう同じ土俵には上がれないものね」
「いいかげん、認めなさいよ」
「あなたはもう、あの頃には、戻れないのよ」
いまのブランコはバレエを踊ることはできない。
ブランコと潤平
しっとりした雰囲気をやぶって潤平があらわれた。
「ブ、ラ、ン、コ」
声がでかい。
ブランコたちの会話などお構いなしだ。
大原田さんを影武者のようにしたがえてブランコに話しかける。
サシュコーとブランコがそっくりなことがショックだった。
「ブランコ、サシュコーに教えてんの?」
「ジョン・クランコの講師なのか・・・!?」
遠慮がない。
潤平は本人をまえにまったく物怖じしない。
潤平はブランコに愛の告白をする。
「あなたを観てっ」
「俺にっ」
「ビッグバンが起きた!」
「星がうまれるくらいのエネルギーの爆発をくらった・・・!!!」
「あれ以上の事件は」
「ー快楽は」
「俺は知らねぇ!」
しゃべりながら潤平は子どもに戻っている。
エネルギーが大量に飛び散って花吹雪のようになっている。
潤平とブランコとオルガ先生のあいだに渦を巻いているのが見えた。
オルガ先生がほめてくれる
潤平はブランコになりたい。
そのためにバレエをはじめたともいえる。
ブランコはののしる。
お前ごときが俺になれるわけがない。
隣のオルガ先生がブランコをおさえる。
「鼻歌歌ってたくせに」
潤平のバジルは、楽しかったのだ。
ブランコを喜ばせた。
オルガ先生はまっすぐ潤平をほめてくれた。
「あなたのバジルは、それこそ若いエネルギーの躍動がまばゆく、輝かしかった!」
「楽しい時間をありがとう」
めっちゃほめられる。
技術的には昔のブランコに遠くおよばない。
それでも潤平だけのパワーがあった。
サシュコー登場
さらにもう1人、この混乱に参加者があらわれた。
サシュコーだ。
さっき踊り終えてそのままブランコに会いに来た。
衣装も脱がず舞台からブランコへ直行。
サシュコーもブランコへ愛の告白。
「観てくれましたね?僕の熱意は伝わりましたか?」
ブランコの振りも衣装も完コピしたのだ。
「僕は、あなたになりたいんだ・・・!」
潤平の目前で事情を説明する。
サシュコーはブランコに師事するためにYAGPを受けた。
しかしグランプリを取れなかったのでジョン・クランコ・スクールへ行った。
今年はグランプリを取る。
そしてブランコに師事する。
「僕の身体は、魂はあなたのダンスを継承するためにあります」
潤平と同じ気持ちだ。
めっちゃわかる。
潤平は流れに乗る。
「はい!俺もG・P獲る!」
「そんでブランコに師事する!!!」
すげえ。
このノリのよさ。
潤平の才能である。
「そんな副賞聞いてない!」
「俺もブランコに師事したい!!!」
「それ参加する!!!」
潤平はいざというとき物おじしない。
子どものように素直に気持ちをぶつけてくる。
冷静に状況を読みながらそれができる。
ブランコは怒りながら会場を出る。
「バッカバカしい!」
サシュコーも潤平も弟子にとる気などない。
そもそもブランコは教えることができないという。
嫉妬心が強くて、才能のある人間をつぶしてしまう。
オルガ先生の説明である。