ダンサーとしてのブランコ
ブランコはすごい。
中村先生は過去動画であらためてブランコを検索した。
スペイン語で検索するとたくさん出てくる。
アルゼンチンの地元バレエ団で踊っている時期の短い動画だ。
中村先生は動画をみてびっくりする。
潤平と雰囲気はよくにていて、
そのうえ「恐ろしく上手い」。
残念なことにアメリカに来てからの記録は少ない。
ABTでプリンシパルになってからは故障が多かった。
そのうえ事故でキャリア中断。
だが残された映像はすばらしい。
「しかし、改めてこれは・・・すげえ・・・!」
中村先生はホテルの個室でひとり、あぜんとする。
ブランコは舞台へ未練が
ブランコが少し動くだけで、ダンサーの片鱗がみえる。
古着屋でブランコの動きを見た店員にすらオーラは歴然としていた。
「なんだその・・・ニュルッとした動き・・・!」
「元々ダンサーか?」
ダンサー仲間を紹介しようとする店員をブランコは拒絶する。
「色々かじったんだけどさ、でもダメなんだ」
「・・・見えない、星が爆ぜるのが-」
足のない体でも、舞台に戻ろうと試行錯誤したのだ。
中村先生からブランコへのお願い
ブランコは舞台へ戻ることをあきらめていない。
そのブランコに向かって中村先生は依頼する。
-もう一度バレエの舞台に立つという未練を完全に捨て去って
潤平に指導をして欲しいんだ。
ブランコはテーブルを義足でけとばす。
復帰が不可能なことなど自分がいちばん良くわかっている。
その中でもあがき、割り切れない思いを抱えている。
初対面のナカムラに、あきらめろと言われる筋合いはない。
中村先生の経験
ナカムラからの依頼は、自分自身の体験から来ている。
中村先生も、ダンサーと教師を並行している時代があった。
「それは思い上がりだ」という父の言葉も気にしていなかった。
現に両立しているカリスマもたくさんいる。
だが自分もダンサーであるなら、
生徒たちはある意味ライバルだ。
潤平と海咲のように刺激しあい
足を引っ張りあったりしながら争う気持ちがある。
甘い覚悟でいる人間を救う義務はない。
君たちは
なぜやらない
なぜ考えない
なぜ集中しない?そこまで本気でないならば
その時間は己に使いたい-・・・
中村先生の場合は、舞台へ上がれなくなってはじめて
教える意識の変化を感じた。
おのれの舞台をあきらめることで
指導に専念できるようになった。
自分の経験、哲学めいたもの・・・秘密、秘訣
何もかもを差し出し、時代に合わせながら根気強く
生徒に教えることを目指している。
中村先生は同じことをブランコに求めている。
「あなたの舞台への執着を、どうか、
潤平を通して昇華してくれないか?」
むっちゃいい先生である。
ブランコにあくまで前向きな潤平
ブランコは店を出ていってしまった。
オルガ先生が説明する。
ブランコは生徒にダンサーとしての輝きを感じると
嫉妬まるだしで罵倒して潰してしまう。
その気持はオルガ先生にもわかる。
「自分の思い入れのある役を
他のダンサーが踊るのを手放しで楽しめない」
元ダンサーのあるある。
ブランコも才能ある生徒に耐えられなくなって家出する。
前回は3ヶ月行方不明。
潤平は笑い出す。
「俺も嫉妬されて家出されたいっ・・・」
ポジティブすぎる。
もしブランコが自分に嫉妬して行方不明になったら・・・。
かっこよすぎる。潤平伝説になる。
能天気はもう、潤平の才能だ。
けっきょくオルガ先生が潤平をあずかってくれることになった。
現時点でアメリカにいられるのは、あと2ヶ月半。
その間にブランコを説得するのが、課題だ。
ダンス・ダンス・ダンスール18巻の発売日
10月12日発売予定です。
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