アクション映画ふうのマイム
潤平たちは夕食を終えるとふたたびスタジオへ戻る。
コッペリアのマイムをマシューとやり直す。
熱心だ。
潤平もマシューもブランコも練習にはまり込んでいる。
マシューのアドバイスはシンプルだ。
・マイムは2人の掛け合い
・音楽に沿う
あとは自信をもって思い切りやれ。
流れのポイントはマシューが押さえるから・・。
潤平が選んだのはアクション映画ふうの動きだ。
襲いかかるコッペリウスの杖を「真剣白刃取り」し
ジャッキー・チェンの動きで机を飛び越して逃げる。
コッペリウスは机に飛び込んでばたばたともがく。
フランツが引っ張り出してあげる。
お礼を言うコッペリウス、
からの追いかけっこだ。
にぎやかなコントである。
ブランコのアドバイスはていねいだ。
・やりすぎだけどいい。
・フランツはもう少し大人がいい。
・自然にやるためには相手をよく見ること。
今まで繰り返し聴いてきたアドバイスがまとまって理解される。
つまり、マイムで見せるのはストーリー。
潤平とマシューはもういちどマイムを通してみる。
潤平はコッペリアのストーリーにたちもどる。
舞台はポーランドの美しい村。
婚約者のスワニルダは夏姫のイメージになる。
読書する謎の美少女は都だ。
謎を解くためフランツはコッペリウスの部屋へ忍び込む。
わっ・・・
なんだここは!
奇想天外、
こんな場所が
この村にあったなんて!!
潤平が都にひかれてバレエをはじめたシーンに重なる。
マシューのコッペリウスは自由自在に潤平を引き込む。
アドリブし放題。
それでいて音楽にピッタリあってストーリーを外さない。
映画オーディションは落選
手応えがしっかりあった。
「俺、マイムいけっかも!!」
帰りの電車のなかで潤平はノリノリだ。
「つーかアドリブ俺、得意でしたわ」
キャラが変わっている。
ブランコは的確に解説する。
今の潤平のほうがはるかに高度な事ができている。
初心者の頃から持っていたセンスに加えて
音の体現、ストーリーを伝える自然なマイム、
作品の世界観、キャラの作り込み、
膨大なものが加わっている。
潤平には思い当たるところがたくさんある。
昔にくらべて自分には大きな進歩があった。
同時に潤平は、ブランコのレベルの高さを予感する。
現役時代のブランコは、はるかに大量の情報を処理していたのではないか。
潤平自身ですらこれだけ成長しているのだ。
電車内でブランコの携帯がなった。
先日の映画オーディションの結果通知だ。
潤平は落選した。
真鶴の混沌
部屋に戻って潤平は真鶴のことを考える。
ヤバい人だった。
現実と虚構とがまざって混沌としている。
コッペリアのマイムで潤平に見えてきた演技の世界。
真鶴はバレエをつうじて演技にどっぷりと浸かっていたのだ。
なにが本当でどこまで計算なのか見当もつかない。
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