ヴァリエーション発表会がはじまる。
サマースクール8日目最終日である。
奨学金つきスペシャル・スチューデントが今日きまる。
しかし潤平も、るおうも欠席だ。
気にする大和たちを尻目に海咲はつぶやく。
「あの程度のことで来ぃひんてことは
その程度の覚悟なんやろ」
けっこうごちゃごちゃ仕組んだくせに。
腹黒いやつである。
いま潤平たちは、発表会どころではない。
呪縛と決着をつける。
砂浜では白鳥の舞台が真っ最中だ。
潤平を抱きしめる都。
るおうの脳裏に今までの記憶が
めまぐるしくよみがえる。
・潤平とキスする都
・弟とキスする母
・綾子の言葉「どいてちょうだい」「邪魔よ」
・おばあ様の言葉。母と比較して拒否される。
幼い都がドアの向こうに遠ざかるのを思い出し、
るおうは思わず踊りに参加する。
悪魔役、ロットバルトとして。
るおう=悪魔ロットバルト
都を潤平から引き離し
自分の腕の中で踊らせる。
砂の上で足場がくずれる。
「ウソつきっ・・・」
るおうの感情が爆発する。
・・・都は僕だけを見てくれると信じていた。
それが目の前で潤平とキスしている。
・・・母は必ず迎えに来ると約束した。
連絡もよこさず、ほかの子とキスしている。
・・・誰も僕を見ないじゃないか。
潤平を見つめながら、都を奪い去る。
・・・必要なく意味なく存在する憎しみの塊
・・・僕、ロットバルトそのものじゃないか!
るおう覚醒
「ニ プーハ ニ ペラー」
おまじないを唱えながら、るおうは踊る。
お姫様が死ぬ。
王子も死ぬ。
るおうは生き返るのを待ち構えている。
「・・・ざまあミロっ・・・!」
おばあ様は膝掛けをつかんで笑っている。
もう立つこともできなくなったるおうに
レッスンをしているつもりだ。
祖母が見ているのは
あいかわらず真鶴なのか?
「おばあ様、僕、見てほしいよ」
「踊るから・・・だから、ロットバルトの」
「僕の、翼をください・・・」
るおうは祖母の膝掛けを取り上げて踊る。
布は悪魔の翼になって、黒い羽をまき散らす。