マガジンサード ラテン 社交ダンス

【#10ダンス #ネタバレ】#3巻#11話

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一晩中踊り明かしたふたり

タクシーの運転手に起こされた。
ラテン鈴木はいつの間にか眠ってしまったらしい。
目の前に雪が積もっている。
あぶない。凍死してしまう。

さすがに死ぬのはまずい。
運転手たちは本気で心配しているが鈴木は平気だ。
「大丈夫でーす」
かるく返事してとなりの杉木を起こす。
杉木も雪の中で寝落ち。
顔が雪に埋もれている。

むちゃくちゃタフである
こんなん風邪をひく。
下手したら死ぬ。
「ま、化け物にも限界があるってこった」
ふたりはコートを着て座り、
温かい飲み物をのみながらおしゃべりする。

練習の鬼

鈴木も杉木もなんともない。
「外で踊んの気持ちイかったね」
「そういえばすっきりしたかも」
こんなやつはじめてみた。

「まさか一緒に踊る人がいるなんて」
けたちがいの体力。
朝まで踊り明かして寝落ちしたあげく
ケロッと回復できる。
「なんでそんなに練習すんの?」
鈴木の問いに、杉木が答える。
「僕は、それしか知りませんから」
ダンスの鬼だ。
雪の反射で相手の顔がキラキラ輝いて見える。

杉木は教室のロッカーの鍵を渡す。
あすは荷物をおいていけばいい。
手ぶらになってまた外で踊ろう。
(別に教室で踊ればいいのではないか?)
(外で踊ったら寒いし、あぶない)

杉木は帰りの電車のなかで感無量だ。
「皮肉だな」
はじめて練習相手をみつけた。
今までの相手はついてこれなかった。
練習がハードすぎるのだ。
パートナーのほうが音を上げて離れていく。
納得行くまで思うぞんぶん踊れた試しがない。

鈴木は理想的なパートナーなのだが
残念なことに男だ。
「同じ情熱と、一緒にやっていける体力、気力」
「誰にも負けない溢れるガッツ」
「触れたところから伝わる意志」
いままで歴代の相方が思い出される。
誰もが杉木についていけず離れていった。

演劇方式でラテンに挑む杉木

杉木と房子ペアはまだラテンを踊れない。
動きは良くなっているのだが雰囲気がちがう。
簡単に言うと「エロ度足りない」
表情がちがうのだ。
持って生まれたキャラの問題なのか。
ニヤッと笑うことができない。
ふわふわと上品にほほえんでしまう。

苦肉の策が「演劇方式」。
振りにセリフをつけて語りながら踊る。
「いつもの調子でいっとけ男前」
心の準備もそこそこにフロアに押し出される。
困惑したままセリフを口にする杉木。
「矢上さん・・・僕と寝る?」
「へ?お断りです」

ラテン鈴木がいきどおって手本をはじめた。
なぜか背景がヒョウ柄になる。
困惑する杉木を目の前にして
たっぷりと官能的に迫る鈴木。
あまりのセクシーさに房ちゃんが赤面する。

次は杉木の番だ。
鈴木は女役。
性悪女キャラで挑発してくる。
振りはすでに体に覚えこんでいるが
その上に感情を入り込ませるのだ。
挑発にのって杉木のSキャラが
じょじょに引き出されてきた。

切れ長の目がさらにつりあがって
杉木の口からセリフが滑り出す。
「お前の悦ばせ方くらい知ってるさ。雌猫!」
予想をうわまわるSキャラが登場した。

アキが手をぐっと握りしめて鼻血を出した。

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