黒飛の接近
校舎の裏で翔之助を待ち伏せる男がいる。
ゴーグルみたいなメガネをかけ、
パーカーの上に学ランをはおった青年。
オシャレなオタクといったところか。
黒飛七音（なおと）。クラスメートだ。
翔之助にはまったく思い当たるフシがない。
黒飛の名前すらよく覚えていない。
しかし黒飛は翔之助に用がある。
話しかけようとして思わぬところで進めなくなってしまった。
翔之助のシャツに書いてあるメッセージだ。
ブタメスで怒りを買う
翔之助の胸におおきく「BUTA MESU」（ブタメス）とある。
なんじゃそら。
意味がわからない。
黒飛は思わずたずねる。
「ブタメスってなに？」
「SM的ななにか？」
翔之助の怒りに火がつく。
そんなことも知らないのか？
「カブトムシの雌のことだよ」
なぜかめっちゃ怒る。
「それはごじゃっぺというものだよ」
「ごじゃっペ」は茨城方言で「まぬけ」の意味。
翔之助はもはや黒飛にかかわる気がない。
さらにブタで怒りを買う
黒飛はすばやく対応する。
スマホ検索で事情を確認。
カブトムシの呼び方の地域差を伝える。
茨城と九州の言葉の差があるのだ。
「でもさ、ブタって頭につけるの
なんていうか酷くね？」
ところが黒飛はさらに翔之助の怒りを買ってしまった。
「オレはブタのこと好きだよ」
「ブタは悪口かい？」
翔之助の表情がきびしい。
真剣に怒っている。
本題を切り出す黒飛
コンテンポラリーダンスの漫画なのに
なぜかカブトムシだのクワガタのことが
大きなテーマになっている。
黒飛はダンスの話がしたいのだ。
放課後、翔之助を呼び止めて
あえて本題の話に入る。
翔之助のふんどし踊りはすごかった。
動画もネットに流れていてアクセスを集めている。
「映像じゃなくて生でアンタのダンスを観たい」
どうすれば観れる？
ダンスを発表する場はあるのか？
黒飛は映像機材にくわしそうだ。
二人がつながればインターネットのから
翔之助のダンスを広げる展開があるんじゃないか？
カブトムシ観とブタ観のちがいを乗り越えれば
ダンスで世界とつながることができそうだ。