付き人「佐市さん」登場
鈴木の生活は一変した。
マックスがパトロンについてから絵に書いたようにセレブな暮らしになった。
めちゃひろいマンションでマネージャーつきの暮らし。
クローゼットには洋服が季節ごとに完備されている。
冷蔵庫にはつねに食べ物と飲み物が補充されている。
ホテルみたいだ。
マネージャーはガチムチのおっさん「佐市さん」だ。
いつもネクタイを締めて礼儀正しい。
いい人だ。
そしてお母さんみたいに世話を焼いてくれる。
普通ならありえない環境に鈴木はとまどう。
杉木先生は新境地
佐市さんの運転する車の中で鈴木は杉木先生をおもう。
杉木先生は全英選手権に出場。
とうぜんのごとく優勝している。
満場の拍手を受けてを踊る。
異常な熱気。
杉木先生が格段の進化をとげていることが観客に伝わっている。
パートナーの房ちゃんが一番かんじている。
杉木先生の踊りが前とぜんぜんちがう。
鈴木の影響である。
杉木先生がマーサと再会
大会優勝の翌日、杉木先生はマーサに会いに行った。
社交ダンスの師匠。
いまだに杉木先生のあこがれの女性である。
外見は老化が感じられるが精神性はかわらない。
マーサを前にすると、杉木先生は少年にかえってしまう。
「ただいま、マーサ」
素になってマーサを抱きしめてしまった。
昨夜の戦いぶりをマーサは見ていた。
杉木先生がすっかり変わったのをマーサは感じている。
単純に言うと、杉木先生はパートナー房子に歩み寄ったのだ。
ホールドを小さくして房子が踊りやすくした。
以前は房子を限界まで動かして、ダンスの効果を最大限に見せるやりかただった。
ダンスの都合と、パートナーの都合をどうすり合わせていくのか。
杉木先生は新たなバランスを見つけた。
マーサはその大変さをよくわかっている。
杉木先生が大きく変わろうとしている。
「大切な人ができたの?」と問われ、杉木先生は答える。
「失恋したんです」
「どうにも諦め方がわからなくて」
大事な人のために杉木先生はめんどくさいこともやるようになった。
たとえばそれは「パトロン」マックスとの付き合いだ。
鈴木にも変化が
日本の鈴木も変わった。
まず外側の形から。
マネージャーの佐市さんが常に「鈴木様」と呼んでていねいに扱う。
庶民から王者への移行だ。
いそがしくダンスの仕事に邁進する。
この環境を積極的に受け入れて前へ進む。
杉木先生に追いつくためだ。
同じ世界で生きたい。
ダンスに集中することが鈴木にとって、
杉木先生とのつながりを確認する手段になっている。
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