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【バレエ・リュス ー ニジンスキーとディアギレフ エピソード】ラストの後

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解雇後のニジンスキー

ディアギレフはニジンスキーを解雇した後も
最期までバレエ・リュスの経営を続けた。

新しい主役、兼恋人を見つけては
バレエ団の花形に育て上げる。
作曲家に曲を依頼し、
画家にセットと衣装を依頼し、
場所と人を手配して舞台をまとめ上げる。

一緒に働いたスタッフはみな
当時を代表する芸術家だった。
ディアギレフは才能を見抜く才能があった。
「天才を見つける天才」である。

ニジンスキーのほうはうまくいかなかった。
ダンサー・振付師としてはすごかったけど
舞台をまとめて形にすることは不得手だった。

ニジンスキーは世俗的な作業が不得手だった。
お金を工面したり。
会場をおさえたり。
スタッフをなだめたり。
スポンサーとおしゃべりしたり。

舞台を送り出すまでには
めんどくさい手続きがたくさんある。
不愉快なことも起こる。

ニジンスキーは踊りのほうに
没入するタイプだったのだろう。
ようするに興行師の才能がなかった。

やがて統合失調症を発症し、入院。
それから30年後に死亡するまで
舞台に立つことはなかった。

ノイマイヤーの『ニジンスキー』

ニジンスキーは30年も何をしていたのか?
あれだけ大きなインパクトを周りに与えたのに
けっきょく精神病院をたらいまわしにされて生涯を終えた。

ニジンスキーの内面をテーマにした作品が
ノイマイヤーのバレエ『ニジンスキー』だ。
DVDも出ているが、めちゃめちゃ面白い。

第一幕は、ニジンスキー最後の公演「神との結婚」から始まる。
舞台を踊るうちにバレエ・リュス時代の活躍が断片的に表れ、
ニジンスキーの人生を回想していく。

第二幕はバレエ・リュスを解雇された後のニジンスキー。
第一次世界大戦がはじまり、ヨーロッパを覆う不安に
ニジンスキーが敏感に反応する。
脳内では、やがて「戦争のバレエ」が始まる。
兵士たちと一緒に今まで演じたキャラ
「黄金の奴隷」や「バラの精」「ペトルーシュカ」が踊り狂う。

見どころはニジンスキーの狂気の表現だ。
体が自分の意思を超えて勝手に痙攣する。
皮膚が裏返って、体の内側が
すっかりむき出しになってしまう。
発狂するとはこういうことか。
観客はおぞましい感覚を追体験する。

ノイマイヤーの振付けは、まるでエガちゃんだ。
お笑い芸人の江頭2:50である。
体を突っ張らせて倒れたり、倒立したり。
これは見たことがある。
エガちゃんの「左右狂いはね」と「エガちゃんブリッジ」だ。

演技が高揚すればするほど
ダンサーはエガちゃんに近づいていく。
目を見開いて狂気に突っ込んでいく様子は
どうみても「エガちゃんだ」と思ってしまう。

それなのに美しい。

2017ローザンヌ・バレエコンクール決勝での「ニジンスキー」

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