黒飛の動機
黒飛は本題に入った。
「映像じゃなくて生でアンタのダンスを観たい」
「どうすれば観れる?」
翔之助は、スマホに写った自分を見つめてからダッシュで逃げ出した。
やはり黒飛と関わる気はない。
黒飛は必死になる。
「あの時あんたが踊った曲、あれはオレが編曲したんだ!」
「曲に合わせて踊るあんたを観てもっと先の可能性が見えたんだ!!」
そういうことだったのだ。
黒飛は音楽制作をして、校内放送で自分の音を流した。
だれかにこれを聴いてもらいたい・・・。
奇跡のように反応がおこり、現れたのが翔之助だった。
まったく想像もつかなかったダンス。
黒飛はつづける。
「もっとダンスをみせてくれ!」
「そしてオレに曲を創らせてくれ!」
すでに制作用の機材はある。
いくつかの作品もある。
いま黒飛に必要なのはインスピレーションだ。
ただの動画ではなく、ちょくせつ自分の目で翔之助のダンスを観たい。
翔之助の努力
黒飛と翔之助は並んであるき始めた。
ようやくまともな会話に入ることができた。
翔之助は自由にダンスを踊ることを禁じられている。
ソラが許可してからでないと動くことができない。
翔之助は校内で踊りだして事件を巻き起こした。
それ以前から不審な行動が多く、
周囲の人々を気味悪がらせていた。
まずはまともな身なりと振る舞いをして
部活動の妨げにならないようにすること。
ソラから制限を課されている。
翔之助は裸足をやめて靴を履いている。
シャツも着ている。
髪は長髪のままだが・・・
彼なりにルールに従っているのだ。
黒飛は疑問をぶつけた。
別に部活でダンスしなくてもいいじゃないか。
「学校でやることになんでこだわるんだ」
翔之助も「部活」に興味はない。
それどころかダンスを人に見せることもどうでもいい。
気の向くままに体を動かしてきただけだ。
代々続いてきた神職の本能が翔之助をつき動かしている。
おとなしくしている理由はひとつ。
「一緒に踊りたい仲間がいるからやることにした」
新メンバーの登場か
黒飛の心が動く。
「なあ」
「オレは仲間になれるか?」
4人目のダンス部員があらわれたかもしれない。