2回戦でワンダさんが敗北
ワンダさんの後に踊りはじめた宇千くん。
絶好調だ。
「なんかいつもよりバイブス強め・・・?」
ワンダさんに引きづられるようにして
パワーを高めている。
審査員のアッセイさんが腕組みしてうつむく。
高校生のダンスバトルでこんな思いをするとは。
「本能的にライバル視してしまう」自分を
アッセイさんは自覚している。
ダンサーのさがである。
相手が高校生だろうが中学生だろうが
すごいダンスをみせられたら嫉妬する。
ワンダさんも宇千くんも、
アッセイさんを嫉妬させるほどのダンスを見せた。
判定を待ちながら宇千くんはセルフ反省会。
水を飲んでワンダさんのダンスを思い出す。
「あの眼」
「『自分の価値観に絶対引きずり込む』っていう意志のこもった眼」
いつもなら宇千くんのほうが、相手を自分のダンスに引きずり込む。
独特の雰囲気にバトル相手が思わずのまれて
宇千くんのマネを始めてしまう。
ワンダさんはまったくちがった。
逆に宇千くんをひきづり込まんばかりの
強力な吸引力を発揮していた。
迷いがない。
けっきょく影響力の引っ張り合い勝負だったのだ。
音楽もそういうテーマだった。
「be like me (俺みたいになれ)」
繰り返される陽気なフレーズ。
ダンサーたちは本能的に音楽を理解していた。
結果は宇千くんの勝ち。
ワンダさんは負けた。
負けたけどいい勝負だった。
カボくんはワンダさんに近づけない
判定をきいて、ワンダさんは会場をでていく。
カボくんは動けない。
顔を赤くしてワンダさんの後ろ姿を見おくるだけだ。
どう声をかけたらいいかわからない。
カボくんは同志として
ワンダさんとダンスし続けた長い時間がある。
ダンスにかけるワンダさんの思いを知っている。
ワンダさんのまっすぐな戦いぶりを
目の前で見てしまった。
マジでどうしていいかわからない。
伊折先輩がカボくんに声をかける。
「よ!ヘタレ仲間」
「なんて声かけていいかわからないんだろ」
伊折先輩も同じ気持ちを味わっているのだ。
さっきカボくんが一回戦負けしたときも困ったし、
恩ちゃんが負けたときも
なんと言ったらいいかわからんかった。
恩ちゃんをダンスバトルに誘った責任を
伊折先輩はなぜか感じてしまったし。
壁ちゃんとカボ君のちがい
トーナメント表の前で、カボくんは壁ちゃんと出会う。
「彼女、負けちゃったね」
壁ちゃんにとっては結果がだいじだ。
宇千くんとワンダさんがバトルして、
勝ったのは宇千くん
ワンダさんは負けた。
以上。
ワンダさんは可能性を持っていたけど、
今回は残念だった。
カボくんは壁ちゃんの意見に納得できない。
勝ち負けだけがすべてではない。
恩ちゃんもワンダさんもすごく良かった。
ダンスを通してその人の本質が見えたように思う。
壁ちゃんのほうにも「勝負にこだわる」理由がある。
壁ちゃんにはダンスしかない(と信じている)。
ダンス以外の人生ではぜんぶ負けてきた。
だから結果を出すために全力を尽くす。
言い訳はしない。
たしかに壁ちゃんは苦労しているっぽい。
コンビニのバイトではクソ客に理不尽に怒られる。
ダンスを練習する環境も悪い。
空調の効いた部室はない。
まともな音響機器もない。
それどころか夜の公園に集まって自主練しているのだ。
文句を言われずに踊る場所が公園しかない。
壁ちゃんには負ける理由がいくらでもある。
カボくんとは環境が全然ちがう。
だからこそ壁ちゃんは結果にこだわる。
「真剣勝負しようよ」
壁ちゃんの結論はそこにたどり着く。
カボくんは壁ちゃんをまっすぐに見つめて答える。
「準決勝で当たったらよろしくお願いします」
カボくんは2回戦で勝つつもりだ。
そして準決勝でも壁ちゃんに勝つ。